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2014年8月 5日 (火)

「縁詠み屋いすずの夏休み」 お試し版

 夏コミ1日目に頒布するオリジナル短編小説「縁詠み屋いすずの夏休み」~トラブル解決率100%の少女~の最初の部分をお試し版として掲載します。
挿絵もないので、どんな話なのかわからないと思いますので、こんな感じの話だとイメージしていただければ。
最終的な手直しはまだですので誤字脱字がありましたらお許しください。
なお、サークルスペースは、8月15日(金) 西地区 うー26a 「たきざくら」ですのでお時間がありましたら立ち寄ってみてください。立ち読み大歓迎です。

「縁詠み屋いすずの夏休み」

 夏休みに入って一日目。
 筱原和樹はかねてから怪しげな噂の絶えない廃病院に忍び込んだのはいいが、地下の霊安室から出られなくなっていた。
  暗闇でも時間が確認できるデジタル式腕時計を見ると、閉じ込められてから一時間になろうとしている。
 昨日掲げた都市伝説解明計画が初めからこうも見事につまづくと、残りの休みは遊びまくってやろうかと和樹は投げやりな気持ちになる。
 そして、しばらくして気づいたのは、『それは外に出られたらの話』だということだ。
 計画や遊びがどうしたこうしたなどということよりも、命の危険にさらされているという苦い現実が皮膚に染みこんでくる。
 霊安室は窓がなく、ドアが閉じられてしまえば昼過ぎとはいえ室内は暗闇にみまわれる。
 正確にいえばドアの隙間からかすかに光がもれているので、中のおおよその位置はつかめるが。
 鉄製のドアはノブを回しても戸が開かない。なんとか開かないかと何度もドアを押してみても駄目だった。完全に閉じ込められた状態だ。
 この大事な時に限って、携帯電話を自宅に置き忘れてしまい助けを呼ぶこともできない。
 ドアを叩いて大声を出してみたが、人が滅多に立ち寄らない場所に一人で潜り込んできたのだから、気づいてもらえるのは困難としかいいようがない。
 有名な廃墟の病院だから、興味を持った見物人が来ることはあるけれども、あいにく今は誰も訪れていないのだと和樹は思った。
 誰かに気づいてもらうのが先か、それとも徐々に弱って死ぬのが先か・・・・・・自分がどうなってしまうのか、わからなくなってしまう。
 体力のあるうちにもう一度ドアをこじ開けるなり、壊さなければならない。
 全身によせる疲労感に耐え、和樹は立ち上がりドアの前に立った。息を吐いてドアに目を向けると、何かがぶつかる音が響いた。
 ドアを突き破りそうなほどの大音響が何度か続いた後、やがてドアの端を引っ掻くような音がする。
  和樹はどうしたらいいのかわからず、入り口で起きていることを見ているしかなかった。
  外の光が漏れるドアの隙間は徐々に大きくなり棒のようなものが差し込まれていく。棒は何度かうねるようにあちこちへ方向を変えている。
「中にいる人っ! 下がってください」
 ドアの外からの声に和樹は軽く驚く。
 声の主は女性で――想像からするに自分と同じくらい年の少女のものに聞こえる。  
 和樹は言うとおりにドアから離れる。すると、ドアがけたたましい音をたてて開いた。 室内が急激に明るさを増す。光を放つ元であるドアに向かって和樹はゆっくりと近づいていく。そして、入り口を開けてくれた人物を見ようとしたが姿は見えない。
 少女の声が聞こえたのは確かなのに――視線の先には誰もいない
「ここって、一人で来ちゃ危ない場所なんじゃないですか?」
 声は彼の胸の高さからする。視線を落とすと、小柄な女の子が金属棒を手にしていた。
「あ、あ、ありがとうございます! このまま誰も助けに来てくれないと思った!」
 和樹は命の恩人にうわずった声でお礼を言った。感情がかなり高ぶっているせいか何度も繰り返し頭を下げる。 
「危なかったですねぇ、だんな」
 同い年か年下の女の子にしては変な呼び方をする。見た目は普通の子なのに、口調が変わっている。アニメやゲームのキャラクターの影響なのかもしれないけど、和樹が知っている作品に思い当たるものはない。
 口調は変わっているけど、コンビニエンスストアのお菓子コーナーでたたずんでいたり、道端のジュースの自動販売機で飲み物を買って一休みしているような感じのどこにでもいそうな普通の子にしか見えなかった。
  少女の姿にはそれといった特徴がないのだ。人混みに紛れてしまったら見つけにくそうなくらいに。
 しかし、言っていることは口調も内容も印象に残る。
 女の子は、キャミソールにミニスカートという軽装で大きめのバッグをたすき掛けの形にかけていた。
 中学二年生である和樹の目には、彼女は自分と同じ年くらいに見えた。しかし、背がかなり低いので小学校高学年なのかもしれないとも思った。
「この病院を見に来てたんですか?」
 女の子は棒を床にそっと投げ落としながら訊いた。
「昔 からなんだけど、行けば必ず幽霊に逢う廃墟だと言われて気にはなっていたんだけど、最近になってヤンキー狩りをしている女の子の隠れ場所らしいって情報を 聞いてもっと気になってさ。で、実際に見てみたいと思って・・・・・・結構前から調べているんだよヤンキー狩りの女の子の都市伝説。君も見に来ていた の?」
「病院に用事はありません。ただ、地下で閉じ込められて困っている人が出るっていうから来てみたんですよ。午前十一時から午後一時の間に」
 見た目は普通なのに、ずいぶんと変なことを言う子だと和樹は訝しんだ。からかわれているのだろうか?  自分の時計をあらためて確認してみると時刻は十二時半少し前だった。
「閉じ込められたのって俺のことか・・・・・・いや、待ってよ! そんなことわかるの?」
「わかります」
「どうやって?」
「まぁ、ちょっと調べてみました。それでわかったんです」
「誰かに聞いた? 幹嗣と誠司には夏休みにここに行くってのは内緒にしたはずだけど・・・・・・あいつらは都市伝説なんて『ばかばかしい』って言っててさ。そのくせ俺がこんなことしているのを幹嗣がぺらぺら話すから、それが嫌でさ」
 和樹は同じクラスの友人、岬幹嗣と高松誠司のことを思い出した。病院の噂は二人も知っている。けれど噂の真相は和樹自身で突き止めてクラスの連中に披露して注目を得ようと考えていたのだ。幹嗣らの鼻を明かしてやりたいという理由もある。
「いいえ。どなたにも聞いてはいませんよ。ちょっと自分で調べてみましてね」
「調べる? なんで? ・・・・・・なんか、変わった能力を持っているって、そんな感じ? 霊が見えるとか」
「生まれてこの方見たことありませんよ。幽霊とかUFOって。とんと縁が無いですね、そういうのは」
  少女は人懐っこい笑顔をしつつも口調は自信ありげに答えた。  
「それなら、どうして見つけられたんだ。ケータイだって家に置き忘れたんだ。GPSとかないといるってわからないじゃん。なんか霊的な力がないと俺がこうして閉じ込められたのってわからないんじゃない? 」
「んーそれはですね。仕組みがありましてねぇ。それを使ってみたんですよ、だんな」
 少女は頭を少し上げて目をつむり、しばし考えにふけた後に答えた。
「やっぱり、何か能力を持っているってことじゃん。仕組みが特別な力なんだろう?」
「ですね。修行して身につけたものだから、ちょっとした能力の一つに入るかもしれないですね」
「すごいじゃないか。こうして人を捜し当てるなんて。テレビでもやっているじゃん、アメリカの超能力捜査官ってやつ。あんな感じで透視とか使って事件を解決できるんだろ!」
 和樹は少女の話を聞くと、気分が異様に高まっていった。もしかしたらヤンキー狩り少女よりもすごい都市伝説の情報を見つけてしまったのかもしれないと胸をはずませる。
「大それた事件解決はちょっと難しいですねぇ。・・・・・・でも、ちょっと自慢していいですか? これまで探しものとかトラブル解決に関わってきましたけど・・・・・・一度も外したことがないんですよ」
 少女は目を細めた温和な表情でとんでもないことを口走った。
「ええ!」
「問題解決、人捜し物探し、全て当てています」
「百パーセントってことか。それじゃあ、俺が閉じ込められているなんて簡単に当てられるよなぁ、すごい、マジですごい」
 和樹は都市伝説や超常現象に関する話には目がない。だけど、それらは話に聞くだけで、実際に見たことも体験したこともない。その反動もあって少女の話に驚き、聞けるのなら全て聞き出してやりたい興味にかられた。
「人を探していましてね。何日か前に調べたんです。筱原和樹さん」
 初めて会った女の子に名前を呼ばれて和樹は言葉が出ない。少女の口調があまりにも自然で、別に何も驚きもないように思えてしまった。最初に『何でも当てる』と彼女からきいていたの理由だと思う。名前を当てるくらいは彼女にとって実に簡単なのだろう。  
「俺のこと、知っているの」
「存じておりますよ」
「本当に何でも当てちゃうんだな・・・・・・でもさ、俺、君のことは全然知らないんだけど・・・・・・何で俺の名前を」
「いやぁ、今回も外さずにすんで正直ホっとしました。だんなも無事にお助けできたし」
 少女は、地下に閉じ込められた人間を捜し当てられたことに満足している様子だ。和樹が問うのをはぐらかしているのは明らかだった。
「本当にありがとう。このまま誰にも見つからずに閉じ込められたままだったらと思うと、ぞっとする。本当にありがとうな」
 和樹は少女が答えてくれないことに内心不満を持ったが、礼を言うことを優先する。
「一人でこんな怖いとこに来るなんて無茶しますねぇ」
 少女は腰に両手を当ててあらためて部屋の様子を眺め回す。『怖い』なんて言っているが、口調は完全にあきれた感じだ。怖がっている様子はない。
「さっ きも言ったけど、どうしてもヤンキー狩りの女の子を見つけたくてさ。しかも、その子ってゴスロリ風の黒いドレスを着た変わった子らしくてさ。情け容赦なく ヤンキー達をボコボコにするもんだから『血みどろゴスロリ少女伝説』って有名なんだけど聞いたことない? その子がここをアジトにしているって情報を聞い たんだ。で、夏休み中に見つけてやろうと思って」
「へぇ、だんな、都市伝説に詳しいですね。あたしもその手の話は嫌いじゃないからたまにネットで見てますけど、だんなの方が詳しそう」
 些細でも詳しそうと言われた和樹は制御が効かなくなり、自分の知る都市伝説の一つを披露し始めた。

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